注文住宅の暖房設備として、セントラルヒーティングなどの現代的な暖房設備とは逆行するかのように、近年は薪ストーブも注目されています。寒い北海道の地でも、薪ストーブがじわじわと人気を集めているようです。
ここでは、豊栄建設監修のもと、薪ストーブのメリット・デメリット、導入する際の注意点などについて解説します。
薪ストーブとは、文字通り「薪を燃料にしたストーブ」のことです。古い時代の薪ストーブしか知らない方の中には、「リビングの面積が狭くなる」「すぐには部屋が暖まらない」などのマイナスイメージをお持ちの方もいるようですが、近年はコンパクトで高性能な薪ストーブも続々と販売されています。
薪ストーブの主なメリット・デメリットを見てみましょう。
暖房機能としては他の暖房設備と大きな違いがないものの、他の暖房設備は部屋を暖めるだけの設備というイメージがあることに対し、薪ストーブには部屋も心も暖めてくれるような不思議な魅力があります。
窓の外に降り積もる雪を眺めながら、パチパチと薪のはぜる音とともに家族団らんの時を過ごせること自体、薪ストーブの大きなメリットになるのではないでしょうか。
暖炉の熱を利用して煮物などの調理をしたりお湯を沸かしたりなど、実用面でのメリットもたくさんあります。停電時でも暖房として機能する点も大きなメリットでしょう。
薪ストーブを稼働させるためには、暖炉の設置だけではなく、煙道や煙突などの設備も必要となるため、どうしても初期費用が高くなります。商品の種類にもよりますが、概ね100万円の初期費用はかかると思っておいたほうが良いでしょう。初期費用だけではなく、煙突や灰の除去などにかかる定期的なランニングコストもかかります。
また、最近では高性能な薪ストーブが販売されているとはいうものの、薪ストーブの原理が変わったわけではありませんので、「部屋が暖まるまでに時間がかかる」という点は昔と同じです。電気で稼働するエアコンに比べ、その点にややストレスを感じる方がいるかもしれません。
注文住宅で薪ストーブを導入する際の注意点について確認してみましょう。
使用している家族にとって、薪ストーブは大変快適な暖房設備ですが、使用中は煙突から煙を排出する形となります。近隣の方々へ十分に配慮する必要があります。
薪ストーブの燃焼で生じた煙は、煙突を通じて外へと排出されます。そのため、燃えたときに臭いが強いものをストーブ内で燃やすことは避けましょう。臭いがもとで近隣トラブルに発展する恐れがあるからです。
特に注意したいのが新聞紙です。キャンプなどでは、薪の着火材として身近な新聞紙ですが、薪ストーブの着火剤として使用すると、煙突から臭いや燃えかすが周囲に飛んでしまう恐れがあります。
また、十分に乾燥していない薪を燃やした際にも煙が多くなったり、臭いが強くなったりします。薪はしっかりと乾燥したものを使いましょう。
煙突から排出される煙は、煙突よりさらに上に上昇していきます。そのため、近隣にマンションがある場合には、マンション上階の住民の方々に迷惑をかける恐れがありますので、薪ストーブの設置には慎重になりましょう。トラブルが予想されそうな場合には、薪ストーブを断念しなければならないかもしれません。
たとえば札幌市では、薪ストーブの設置を禁止してはいないものの、煙突の設置場所や木材の使用などに関する注意喚起を発信しています。いずれも近隣への配慮を趣旨とした注意喚起です。
薪ストーブを設置する場合には、設置者に相応の責任があることを理解しておきましょう。
体も心も暖まる理想的な薪ストーブですが、やはり現実的な問題として、真冬の北海道の住宅を十分に暖めてくれるかどうか、不安が残ることも事実です。少なくともこの極寒の地では、他のメインとなる暖房設備の「副暖房」としての位置づけになるかもしれません。
暖房設備には、他にもエアコンやセントラルヒーティング、床暖房などの様々なものがあります。それら別の暖房設備も十分にリサーチし、理想的な暖房環境を整えていきたいものです。